最後の記念撮影 いやぁ,良かった ==> 日本、W杯一番乗り 北に2-0 3大会連続 サッカー二〇〇六年ドイツW杯アジア最終予選B組の日本は八日、バンコクのスパチャラサイ国立競技場で無観客試合の中、北朝鮮と対戦、2-0で快勝し、三大会連続三度目のW杯出場を決めた。日本は4勝1敗で勝ち点を12に伸ばしB組2位以内が確定、一九九八年フランス大会、〇二年日韓大会に続くW杯切符を手にした。出場三十二チーム中、開催国ドイツを除き世界各地での予選突破第一号となった。 同日夜、行われた同組イラン-バーレーンは1-0でイランが勝ち、勝ち点を13に伸ばし出場を決めた。バーレーンは勝ち点4で3位が確定、勝ち点0の北朝鮮は最下位。 引き分けでもドイツ行きが決まる日本は中田英寿(フィオレンティナ)ら主力三人が出場停止だったが、優勢に展開。後半28分に柳沢敦(メッシーナ)が先制、終了間際には大黒将志(G大阪)が追加点を決めた。 この一戦は平壌開催だったが、三月の北朝鮮-イラン戦(平壌)で観客が暴徒化、国際サッカー連盟(FIFA)が北朝鮮に「第三国での無観客試合」の処分を科した。主審の笛や選手らの声が響き渡るだけの異様な雰囲気の中、行われた。 「みんなで戦った集大成」 「ニッポン・コール」もサポーターの絶叫もない無人のスタジアムに選手と監督、コーチらの歓喜の声だけが響いた。 日本代表が初めて経験する無観客試合は、日本の三大会連続W杯出場を世界で最初に宣言するという歴史的な一戦として記憶されるだろう。 初出場を果たした一九九八年フランス大会では三十二チーム中三十一番目の切符獲得だった。 「この日がくるのを、疑っていなかった。みんなで戦ったことの集大成だ。負けたときは、いろいろ言われたが、落ち着いて戦ってきたことの結果だ」。ジーコ監督は汗をぬぐいもせず語った。 二〇〇二年六月十八日。日韓大会決勝トーナメント一回戦で、日本がトルコに0-1で敗れ去った日が、ジーコジャパンの出発点といっていい。組織戦術をたたき込んで日本の力を引き上げた当時のトルシエ監督だったが、守りを固めたトルコに、カウンター主体の日本の戦いは完封された。 露呈したのは、判断力や決断力を含めた局面を打開する個人の力の低さだった。就任したジーコ監督はガチガチの組織サッカーから選手を解放、個の力を前面に出すサッカーを掲げた。キーワードは「自由」。 しかし選手を尊重するあまり、「戦術が見えない」「放任」といった批判や疑問の声が上がった。昨年夏のアジア杯優勝で幾分、収まったが、今回のW杯最終予選を控えた強化試合で連敗すると、再び風当たりは強まった。それでも指揮官は選手を型にはめず、戦術の強要もしなかった。 例えば大一番となったバーレーン戦直前の中東合宿で、ジーコ監督は珍しく速攻対策を施しDFと中盤の選手にスペースを空けずカバーするよう指示した。ただ具体的な動き方は示さない。選手はピッチや食堂、宿舎の部屋で議論を重ねた。 問題点は指摘し方向性や答えは提示するが、解き方は選手に委ねる。余計な肥料は与えず、本来の生命力で芽を出し花開くのをじっと待つ我慢強い方針は、いかにも時間がかかる。それでも指揮官は「プレーするのは選手だ。彼らが各局面で、自ら考え最善のプレーを選択するようにならないと、日本のサッカーは伸びない」と言い続けた。 果たして個の力は伸びたのか。 W杯予選やアジア杯で何度か演じた逆転劇やロスタイムの決勝点をジーコ監督は「偶然ではない」と断じてきた。一つ間違えれば敗れる苦闘の連続といえなくもないが、今回のバーレーン戦、北朝鮮戦で「強い気持ちを持て」と説いたジーコ監督は、2点をもぎとって勝った選手たちを「気持ちが入っていた。平常心を失わず、ガッツが出せる」とたたえた。 連敗したり快勝したりと、まだ足元は危なっかしいが、勝負強くなったのは間違いない。 世界一早く出場を決めたチームには世界一長い準備期間が与えられる。本大会開幕戦は来年の六月九日、ちょうど一年。これからの土俵は世界になる。今月はW杯開催国ドイツで各大陸王者が争うコンフェデレーションズ杯も開かれ、日本は王国ブラジルにも挑む。 「世界の強豪と戦っても気後れしないチームにする」。ドイツでの目標は「ベスト8以上」。本大会切符の獲得は新しい戦いの始まりでもある。 <<< 選手コメント >>> 川口能活(ジュビロ磐田) 「これからは世界で勝つために」 とりあえずワールドカップ出場権は得られたが、今まではアジアで勝つための戦いで、これからは世界で勝つために何をすべきかを考えて取り組んでいきたい。 8年前は自分のことで精いっぱいで無我夢中でやっていたが、今回はわりと余裕をもって周りが見えて、落ち着いて戦えたと思う。 自分たちの持っているものをしっかり出せば、予選は必ず突破できると思っていた。最初は(チームが予選の)雰囲気に慣れないところもあったが、みんなが精いっぱい頑張った結果、素晴らしい結果になったと思う。 大黒将志(ガンバ大阪) 「絶対に点を取ろうと思っていた」 スタジアムの外から応援してくれている声も聞こえてきたし、テレビの前でも応援してくれていると思っていたので、勝ててよかった。 (得点シーンは)出場したら絶対点を取ろうと思ってそれだけ考えていた。もう2点くらい取れるチャンスがあったが外していたので、絶対入れてやろうと考えていた。GK出てきたのんで、かわして入れられたのでよかった。監督が使ってくれたので、その期待に絶対応えたかったし、結果としてよかった。 (ゴールを決めてベンチに駆け寄ったことについて)自然と走っていた。ピッチの上もベンチも一緒だし、誰が出ていても(チームとしての)クオリティも一緒。自分としては、とにかく出してもらって、やらなあかんと思った。 1点目の場面は、裏から出てDFのクリアから点になった。決まってよかった。自分自身は、何回かチャンスを逃してしまったので、今後の課題としたい。(2度のオフサイドは)ビデオで確認しないと分からないけれど、自分ではオフサイドではないと思う。 これからも今まで同じように練習から一生懸命やって、試合で使ってもらったときに結果、ゴールを出せるよう頑張りたい。 宮本恒靖(ガンバ大阪) 「W杯予選は気持ちの部分が大きい」 ほっとしている。2002年のワールドカップを経験して、本当にいい大会だと思ったので2006年も出たいと思っていた。予選は始めての経験だったので難しかったが、(本大会出場が決まって)よかった。 (予選を振り返って)一番苦しかったのは、イラン戦の後とキリンカップの後。その後皆で話し合って、気持ちをひとつにすることができた。ワールドカップ予選というのは、やはり気持ちの部分が大きい。 チームとしては、すべてにおいてレベルアップしなければならない。やはり守備面でもう少し精度を上げていきたいところ。レベルの高いチームが相手だと、(相手)ボールの近くで守ると個の力でやられてしまう。ボールから遠いところで守ることを、今度のコンフェデでは試していきたい。 福西崇史(ジュビロ磐田) 「我慢するサッカーだと思っていた」 失点できないのでリスクのないサッカーになってしまったが、我慢するサッカーだと最初から思っていた。後半はスペースができてきて、中盤がわりとフリーになった。我慢した結果、点を取ってもらえたので、余裕をもって試合を運ぶことができた。 これが会場が日本で、観客が入っていたら、もっと盛り上がっていたとは思う。でも勝ててよかった。 今回、チーム内でいろいろと話をしてよかった。皆がまとまることが一番大事だと思う。もっともっとレベルアップして、日本代表が強くなるように自分も頑張っていきたい。 中澤佑二(横浜F・マリノス) 「力が入らない分は気持ちでカバー」 (スタメンが決まったのは)とりあえず、今日の朝まで様子を見ることになっていたが、自分でもスタメンに入れるかどうか分からなかった。ドクターからはゴーサインをもらっていたし、自分では出場する気持ちはあった。でも出る以上、途中でプレーできなくなって交代枠を余計に使わせるわけにはいかなかった。 (実際に出場して)ひさに負担をかけないように気をつけて、力が入らない分は気持ちの面でカバーした。マコさん(田中)が(北朝鮮の選手に)蹴られたときは「助けに行かなきゃ」と思って行ったんだけど、返り討ちにあってしまった(笑)。 (無観客試合ということで)今日は声が通ってよかった。特に疲れているときには、声を掛けられることで、一歩も二歩も前に出ることができる。とにかく自分が出ると決まった以上、出てない人以上のパフォーマンスを見せなければならないと思った。 最後の最後で苦しかった。ワールドカップ出場を決められて正直うれしい。実感が沸かないけれども、とりあえず今日は勝ててよかった。多少けがはあったが、それでも監督が先発で使ってくれた思いに応えたかったし、逆にツボ(坪井)や茶野さんの分まで頑張らないと、と気持ちを込めてやった。 チーム一丸となっているところがいいところだと思うし、一人一人がワールドカップに出るために何をしたらいいのか分かっている。試合に出ている選手は、出られない選手の分まで頑張る。出ていない選手はくさらずに頑張る。これを引き続きやていきたい。僕に限らずワールドカップにはみんな強い思いがあるし、まだ始まったばかり。出てよしではなくて、出てからが大事。 中田浩二(マルセイユ) 「自分たちの力で勝ち取れたW杯はうれしい」 ディフェンスからしっかりやろうと思った。僕の中ではチャンスだったので、いいアピールができてよかった。ワールドカップ出場を決める試合で、90分できたのはうれしく思う。(得点シーンは)うれしくうれしくてっていう感じで。自分たちの力で勝ち取れたワールドカップだったので、本当にうれしかった。 競技場の外から応援してくれている声は僕ら選手にも届いていたし、またブルーカードなどでも応援してくれていたのですごくうれしかった。僕ら選手だけじゃなくてサポーターも含めた勝利だと思う。これに満足せずドイツでもいい戦いができるように頑張っていきたい。 田中誠(ジュビロ磐田) いい結果に終わって、ワールドカップにつながって本当によかった。(相手選手に蹴られたとき)向こうもずいぶんカッカしていた。こっちは何もしなかったけど。今は本大会行きが決められてほっとしている。やっと重圧から開放されてよかった。 北朝鮮戦後 ジーコ監督会見 就任したときから、W杯出場を確信していた 今日の勝利で本大会に駒を進めることができた。協会、スタッフ、選手はもちろん、この偉業に協力してくれたすべての人たちに感謝したい。私はこの仕事に就くときサインしたときから今日のことを確信していた。皆の力を結集すればとてつもないことを成し遂げられるという確信をもとにこれまでやってきた。ワールドカップ予選11試合を戦い、1敗という立派な成績で本大会に行けることを心から喜んでいる。そしてこの結果を心待ちにしてくれたサポーターにこの勝利をささげる。 ――予選を勝ち抜いた最大の力とは何か? 予選はどれも厳しい試合だった。技術的、戦術的なこと以上に、気持ちで負けててしまっては自分たちの高い技術が出せないということを毎試合選手に確認してきた。相手の勢いを跳ね返して初めて技術が生きる。今日もも、いつの試合も、選手たちはそのことを実践してくれた。 ――無観客の試合で選手をどのようにモチベート(動機付け)したか? いま試合が終わったので、自分の意見を言わせてほしい。この試合には別の形の制裁が考えられるべきだった。きょうの試合はタイで行われたが、世界で最初に2006年ワールドカップの出場国が決まるかもしれないという試合を、タイの観客が見ることができなかった。日本のサポーターも見ることができなかった。これには、やはり別の形があるべきだったとつくづく思う。選手には、無観客であることは忘れろ、ピッチの中で起きていることだけに集中しろ、と指示した。 一番苦しかった時期は、先日のキリンカップ連敗後 ――北朝鮮をどう思うか 個々の選手が速さがある。引き気味からのカウンターが鋭い。その2点を注意して、攻めているときにカウンターを受けないような戦術を心掛けるよう選手に指示した。今日は暑かったので(2月の)日本での試合ほどではなかったが、そういう相手の良さを消すように考えた。 ――一番苦しかった時期、悩んだ時期はいつか 難しかったのは、先日のキリンカップ2試合の後だ。いい形でプレーしながら結果が出なかった。負け慣れていないチームなので、その影響が悪い形に及ばないかと心配した。やっていること自体は悪くない、足りない部分を修正していけばいいと選手が受け止めてくれて、この2試合の結果につながったと思う。やはりワールドカップ予選を戦う責任は重くのしかかるものなので、あそこ(キリンカップ連敗)で崩れなかったのがきょうの結果につながったし、それがチーム成長の証だ。 ――バーレーン戦勝利の後、選手を心理的にコントロールする難しさはなかったか あの勝利によって、あと勝ち点1、引き分けでもよくなった、あるいはイラン対バーレーンの結果次第ではワールドカップ出場が決まるということで、どうしても勝ったような気持ちになってしまう。しかし、そうじゃないんだ、自力でなんとかするんだということを選手に言い聞かせた。また、引き分けでいいとなるとどうしても引いてしまう、そうすると相手も前に出てきてしまい、日本にとって危険な形に陥ってしまう。そういう試合はしたくなかった。いつものようにバランスよく、積極性を失わずに攻めろと選手たちに話した。 パク・ジョンホン(北朝鮮コーチ)談話 (選手が)期待通りに走ってくれなかった。暑さにやられたのだろう。能力の70パーセントしか発揮できなかった。ピョンヤンで試合をすれば100パーセント出せたと思う。それが敗戦の理由だ。
by afternoon_news
| 2005-06-09 08:01
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